佐渡の三人 / 長嶋有

「死んだらいなくなるというのは、そういうことなんだな。死ぬというのは身体的なことや観念的なことだけでない。」

「鶏を食べてなくなるとき「なくなる」のはその体だけではない。鶏を運ぶという「作業」もなくなる。(・・・)字数の足りない戒名をつけちゃった人が「いなくなれば」、それはなくなる。」

なくなるのを見ることが出来るのは、

「 我々は。我々は生きているのだなあと不意に実感した。「人が死ぬってそういうことだ」の反転で、生きている者たちの――ついさっきの――ふるまいを思い出す。
(・・・)
 そのことは祖母やおじいちゃんの意思を軽んじたとはなぜかまるで感じなかった。意志があるとき、それは尊重された。意志がなくなったんだ。」

我々が尊重しているのは、いつかはなくなってしまう同類の意志である。そしてまた自分も。

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