Archive for the ‘書籍’ Category
ミステリアスセッティング / 阿倍和重
木曜日, 5月 13th, 2010Self-Reference ENGINE / 円城塔
木曜日, 4月 22nd, 2010ママはテンパリスト 3 / 東村アキコ
水曜日, 4月 7th, 2010海月姫 4 / 東村アキコ
月曜日, 3月 29th, 2010まんが極道 4 / 唐沢なをき
月曜日, 3月 29th, 2010猫の水につかるカエル / 川崎徹
金曜日, 3月 19th, 2010「ある現象に出会った時、直ちにそれを意味に置き換え分析したり、情緒に引き寄せて解釈することは極めて稀で、現象をまるごと、何の解釈も加えずに受けとろうとする傾向が強い。」(傘と長靴)
そんな著者が、父の死から自分の死までを見つめる小説2編。
「 棺の中の人は父である。
父と思い、そう呼んできた人である。だが、いまも父であるかと言えば疑わしかった。父の残滓だった。まして捕われの人のように両手首を縛りあげられた姿は、父ではない、わたしの知らない人に見えた。同時に、これが父の本当の姿であるようにも思った。そして、その姿を自分に置き換えるのは容易なことだった。」(傘と長靴)
「 生命体としての自分が消滅することは、仕方のないこととしてなんとか承知できそうだ。時間がかかるにしても、受け入れることができるだろう。
だがどう考えても断ち切り難いのが、現在のわたしが切り結んでいる家族、友人、猫たちとの関係だった。網の目状に張り巡らされたそれら諸々の関係によってわたしは生かされていた。わたしという実体はなく、関係こそが、関係の総体がわたしだった。わたしにはひとりで生き、ひとりで死ぬ力はなかった。諸々の関係抜きに、わたしは存在し得ないのだ。」(猫の水につかるカエル)
ひまわりっ 13 / 東村アキ子
火曜日, 3月 9th, 2010ハード・コア / 狩撫麻礼 いましろたかし
水曜日, 3月 3rd, 2010ちいさなのんちゃん すくすくマーチ / 永野のりこ
日曜日, 2月 21st, 2010麻布怪談 / 小林恭二
水曜日, 2月 10th, 2010
はじまりは怪談だけどその謎が解かれるにつれて人情が深まり、ほんとうの謎が解けるとき物語は終わる。
「
「あたしね・・・」
初はゆっくりと笑顔を作った。
「死ぬの」
「え」
「あたし、子供を産んだら死ぬの」
初の笑顔から涙が零れる。
(・・・)
「教えてくれ」
「何を?」
「何もかもだ。おまえはなぜ俺の前に現れた。なぜ俺の子を産む。なぜ今になって去ろうとする」
初は涙を拭い、新しい笑顔を作った。
「あなたのことが好きだからよ」
「そんなの答えになってない」
「なってるわ。あなたが好きだから、あなたの前に現れた。あなたが好きだから、あなたの子供を産む。あなたが好きだから、去らなければならない」
(・・・)
善四郎は穴の底で、初のことばを懸命に拾い集めた。
「あたしは、生きていた頃のあたしの思いと、かつてあなたの妻だった人の思いの中に生きてるの。今ここにいるあたしは、ふたつの思いが仮にかたちをとったものにすぎない。子供ができればすべての思いは霧消する。そうなればあたしも霧消する」
善四郎は集めたことばを理解しようとした。しかし何も理解できなかった。善四郎は、手にしたことばを投げ捨てた。
」
整形前夜 / 穂村弘
金曜日, 1月 29th, 2010毎月新聞 / 佐藤雅彦
金曜日, 1月 29th, 2010エスケイプ/アブセント / 絲山秋子
木曜日, 1月 28th, 2010東京怪童 2 / 望月ミネタロウ
金曜日, 1月 8th, 2010モーダルな事象 / 奥泉光
金曜日, 1月 8th, 2010「方々から頭が浮かび上がって、シンクロナイズドスイミングの選手たちのように一斉に動き出すから慌てた。見ると頭の一つは太宰のだ。隣のもじゃもじゃ頭は芥川。丸眼鏡のフランキー堺は花袋。あっちは独歩。こっちは紅葉。その他ぞろぞろ出て来て、やがて沼は有名無名取り混ぜた近代文学者の頭で一杯になる。泳ぐ日本近代文学者総覧だ。崩れかかり骸骨になりかかった頭たちがこちらを向いて、歯列の剥き出しになった口をぱくぱくさせるのは、何か訴えようとするものらしいが、声帯が失われているせいか声にならない。」
桑幸の若干ふざけて情けない感じが良い。
「そのとき桑幸は自分が何者であるか、少しだけ理解出来た気がした。つまり俺は、死の国に、死者として生まれた者である。であるにもかかわらず、俺は生きているのだ。俺は生きた死人であって、蚯蚓(ミミズ)の蠢動と変わらぬ活動しかなしえぬにしても、俺がとりあえず生きているのは間違いないのだ。いずれ世界が死に覆い尽くされるのだとしても、生きている以上、俺は蠢かないわけにはいかない。見苦しく動き回らないわけにはいかない。宇宙の音楽が完全無欠の和声を奏でるのであるなら、泥ナマズの俺は一個の騒音に他ならない。そうだ、宇宙のちっぽけな騒音として俺はあるのだ。」