Archive for the ‘書籍’ Category

日本世間噺大系 / 伊丹十三

月曜日, 11月 7th, 2005

日本世間噺大系「額などという、実用的に見れば何の役に立つとも知れぬ鈍感そうな場所に、こんな感覚が埋もれているとは!」

プレーンオムレツ作っちゃいました。
興味深い話が満載です。

boys don’t cry / 田口賢司

日曜日, 10月 30th, 2005

boys don’t cry(ボーイズ・ドント・クライ)「ねえ、たいしたことって何なのかしら?どんなことがたいしたことなの?私、ときどきこう思うの。"たいしたことなんて何もないんじゃないだろうか"って。だけどすぐにそんな考えを打ち消すわ。ねえ、人生を楽しくするより退屈にする方がずっとずっと簡単なのよ。嫌よ、私。人生は楽しい方がいいに決まってるわ。そりゃあ、なかには退屈な人生の方が楽しいっていうややこしい考え方の人もいるかもしれないけれど"人生を楽しむ"ってことでは共通してるわよね。」

「彼女は言う。「東の空から大っきなはげあたまが昇ってきたの」」

毎日いろんなことが起こっていて、そのひとつひとつに意味や重みをつけたりつけなかったり、つけなかったり、そしてまたいろんなことが起こる。いろんな始まりがあっていろんな終わりがある。終わったことばかりが記憶に残る。終わった?

「ひどくばかばかしいかんじがするよ。でも何がばかばかしいのかさっぱりわからない」

そんな感じ。

メドゥサ、鏡をごらん / 井上夢人

月曜日, 10月 24th, 2005

メドゥサ、鏡をごらん「素材から、あなたがなにか小説を想像したとしたら、それはあなたの作品よ。」

もうゾクゾクしっぱなしですわ。

ところで、頻繁に登場する特急あずさには何度も乗ってるんですが、ここでふと思い出したことがひとつ、それは、電車って人の移動速度をはるかに超えてるよなぁ~ってことです。ま、余談ですが。。。

熊の場所 / 舞城王太郎

土曜日, 10月 22nd, 2005

熊の場所「恐怖を消し去るには、その源の場所に、すぐに戻らねばならない。」(熊の場所)

思わずウッと顔をしかめてしまいそうな文章もあるが、そこを乗り越えなくてはいけないのだ。紙の上の文章なんてただのユーモアあふれるサーヴィスなのだ。

「買った本はちゃんと読めっつうの馬鹿!」(ピコーン!)

ニッポニアニッポン / 阿部和重

金曜日, 10月 21st, 2005

ニッポニアニッポン「この俺が、「人間の書いたシナリオ」を全部ぶち壊してやる」

でも、この小説自体が「人間が書いたシナリオ」なんだから・・・ぶち壊せ!

ABC戦争 / 阿部和重

月曜日, 10月 17th, 2005

ABC戦争―plus 2 stories「公爵夫人邸の午後のパーティー」の奇妙な感じが面白い。

「問題は、ここで語られた――あるいはこれから語られるであろう――多くの事柄が、あたかも関係者の証言にそった事実であるかのように述べられているが、じっさいは語り手による部分的なつけたしによってでっちあげられたいかがわしい挿話なのであるということだ。なぜそのようなことになってしまうのか。」(ABC戦争)

ダブ(エ)ストン街道 / 浅暮三文

土曜日, 10月 1st, 2005

ダブ(エ)ストン街道「それはまるでガンモドキの中にいるようなものだった。そして私たちはガンモドキの中にある銀杏二粒。銀杏が移動しているつもりでも、実は動いているのはガンモドキの方。そんな感覚が襲ってくる。」

変わった登場人物がいろいろ出てくるのが楽しい。
軽くてサクサクと読めた。

「確かにここでは歩き続けること、迷い続けることが次への扉になるのは確かだ。探し出すべきなにかは一ヶ所にじっとしていても見つからない。何度も同じところをいったりきたりしながら、幸運と偶然を自分の手でつかむしかない。」

パラノイアストリート 1~3 / 駕籠真太郎

金曜日, 9月 30th, 2005

パラノイアストリート 1 (1)いろんな常軌を逸した町が登場する漫画。
著者お得意のグロ表現があるが全体的に楽しく読める内容ではある。
特に1巻で登場する小夜ちゃんは悪ふざけ爆発である。(ぼくは好きだけど)
あと最終話が面白かった。久々に思わず唸るような結末。

臨場感のない醒めた視点で淡々と展開していく作風にあったなかなか良い作品でした。

インディヴィジュアル・プロジェクション / 阿部和重

月曜日, 9月 19th, 2005

インディヴィジュアル・プロジェクション「ぼくらはできる限り詳細に事態の推移を補足し、それを簡潔に物語ってみせなくてはならなかった。」

日本の実話 / 河井克夫

月曜日, 9月 12th, 2005

日本の実話性欲にまつわる漫画短編集。
怨念やら情念やら出来心やら偶然やらが入り混じっていて不思議な感じ。
モノローグの視点がいやに醒めているのがなんともいえないリアリティがある。
これは面白かった。

文芸漫談 笑うブンガク入門 / いとうせいこう×奥泉光+渡部直己

木曜日, 8月 25th, 2005

文芸漫談―笑うブンガク入門いとうせいこうのツッコミもなかなかいいが、奥泉光の余裕のボケがおもしろい。
言うことはちゃんと言ってるし。

ツンドラ・パンチ! / 中川いさみ

月曜日, 8月 22nd, 2005

ツンドラパンチ全体的にいまひとつという感じはするが、ちょっと変わった空気の流し方や突発的に出る投げやりっぽいギャグがいい。
個人的には「絶滅しちゃおーかな~」と言って脅迫する特別天然記念物のダルマウサギと、プレゼントが足りないので自分の耳を切り落として痛がるサンタが好きだ。

無情の世界 / 阿部和重

金曜日, 8月 19th, 2005

無情の世界「だって、僕と何らかの関係ができてしまってからでは、彼女はいわば僕用の態度をとりはじめてしまうからね。そこで彼女は自分の行動を制限してしまうはずなんだ。」(トライアングルズ)

文章は淡々と書かれているが、その書かれている内容がどうも普通じゃない。普通じゃない内容も面白いのだが、それを淡々と書いてあるところが思わずぷっ!と吹き出してしまいそうになる。もしかしてこの人は堂々とデタラメ言っているのではないかと疑ってしまうのだ。とはいえ、もともとこの世界のいろんなものはそういうものなのかもしれないが。

もののたはむれ / 松浦寿輝

日曜日, 8月 14th, 2005

もののたはむれ「あなたの目の、ちょうど裏側のあたりから、頭蓋骨の真ん中まで並んでいる骨があるの。蝶々の形をしているから胡蝶骨っていうの。六個あるのよ。真っ暗な中に蝶々が六羽並んでいるの。お琴の弦をかき鳴らすようにそれを撫でると、こんな音が出るの」

これはもう、読まないと損である。
と、書いておいて何が損なのだかよく分からないが、こんなに豊かな感じの短篇集があったとは、久々の発見である。なんども読み返したくなる文章は、時に、ぞおっと鳥肌が立つほど美しい。

「そう言えば、今まで考えてみたこともなかったが何年か前に初めて会ったとき以来、どうしたわけかこの子はちっとも大きくならないようなのだ。
「本当・・・。本当はね・・・」。隆司君はそこで言葉を切って、少しの間ためらった。その先を聞きたくないという気持が不意に榎田の中で動いたがそのときにはもう少年の血の気のない唇が動いていて、小さな、だがきっぱりした声が彼の耳に届いていた。「本当は僕はいないんだよ」
 何を馬鹿な、といったことを言いかけて言葉を探しながら榎田は隆司君の哀しそうな目を見つめていたが、少し間を置いてから少年が「おじさんもでしょう」と言ったときそれこそ背筋にぞおっと鳥肌が立ったのは今度は榎田の番だった。」

風のくわるてつと / 松本隆

水曜日, 8月 10th, 2005

風のくわるてつと古本屋で見つけたので買ってしまった。
新潮文庫版は買ってあったはずだが・・・

詩もいいけど、短編小説らしきものがけっこう好きなんだよねぇ。

「ねえ聞いてよ ぼくはすてきなことをおもいついたんだ 時間とすいちょくにきみをわぎりにするのさ そうすりゃきみは動かない いちまいの絵になるのさ なにしろぼくのひとみはがくぶちなんだから すてきだろう」(風化粧)

「言おうと思っていることは、言葉になると同時に空中に飛び散ってしまい、不気味な形の汚点が翼を広げている天井のあたりで、とりとめもなくためらっているだけだった。」

「――あなたは本当に子供のようよ、隠れん坊していて忘れられた子供みたい、鬼はいったい誰なの?」

独特の語り口がたまらない。