時代小説、と銘打ってありますが、そんな堅苦しさはちっともないです。
愚痴る侍の口調が現代風にアレンジされていたり、会話に風刺がふんだんに盛り込まれていて面白い。
「つまり彼は自分が相手にとって彼だということが分からない、つまり自分にとって自分は僕だから相手も自分を僕だと思っているのだ。だから相手に感情や意思があるということがわからんのだよ。つまり自他の区別が付いていないということだな。要するにこれは幼児の態度であって、世の中全体を母親だと思っているのだ」
それにしても町田康のエンターテインメント魂はすばらしい。
「腹ふり党」をはじめとする冗談のようなアイデアがどんどんと現実として起こりそれらに翻弄される登場人物たちの生き様、斬られ様。
「僕はこの世界の前提を問いません。世界なんて関係ないんだ。たとえ虚妄の世界であろうと僕は生き延びる。」